役付手当の次に採用率が高いのが「家族手当、扶養手当、育児支援手当など」で、65.9%の企業が採用しています。採用率が50%以上であるのは「通勤手当など」「役付手当など」そして「家族手当、扶養手当、育児支援手当など」の3類型の手当けです。
第2次世界大戦中、政府は物価上昇を抑えるために「賃金統制令」を公布し、賃上げを原則として禁止しました。その一方で、金額を規制しながらも家族手当を支給することは許可しました。これによって家族手当は急速に普及しました。
このように家族手当も成立の初期には十分経済的な合理性がありました。当時は家族手当でも払わなければ従業員が生活できない状況で、生活できなければ労務も提供できません。
現在は終戦直後とはだいぶん状況が変わりました。正社員に限って言えば、基本給だけで生活できないということはありません。配偶者が家事に専念することも、他に選択肢がないわけではなく、ある意味で選択的な行動であるといえます。
女性の労働者はたくさんいますが、彼女らが家族手当を受給できる機会はまれで、家族手当はさながら「男子結婚手当」の観があります。企業が生計費に配慮する必要があるかどうか自体に議論の余地がありますが、男子の結婚のみに配慮する理由は見当たりません。
他の生活手当では、まず住宅手当は、生活には光熱費や被服費など様々な非選択的支出があるのに、住居費にだけ配慮する理由がはっきりしません。
単身赴任手当は、それをしなければならない正当な理由があるかどうかを判定するのは非常に難しいことです。転勤があることを前提に採用されているならば、たとえば持ち家があるということは理由になりません。
このようにいうと、中高年(私もその一人)の方から猛反発があるかもしれません。しかしこうした生活手当があるあらこそ、結果的に中高年、特に男性の人件費が割高になり、希望退職の優先順位が高くなっている事実もあります。日本では希望退職というと高年齢者優先ですが、アメリカでは短期勤続者優先です。
いずれにせよ、手当という制度は見直すべき時期を迎えているといえましょう。