4-1.なぜ賃金には等級が必要なのか

これまで、賃金制度を設計するときの条件について述べてきました。それらを踏まえて、ここからは具体的な賃金制度の作り方についてお話しします。

 

ひとくちに賃金制度といっても、それを構成するものには大まかに言って①等級、②基本給、③賞与、④手当、⑤評価、そして⑥退職金があります。まずは等級制度の作り方についてお話しします。

 

等級とは「これくらいの○○の人にはこのくらいの賃金」という、会社が定める大枠のことです。ある社員を新たに採用した場合、その人の賃金をいきなり何円と決めるのは困難です。新規学卒者ならば社会的に相場が形成されており、それに沿ったものを支給すれば事足りますが、いわゆる中途採用の場合、社会的な相場というものはありません。

 

それで、まずその人を何等級にするかを決めます。このときにはその人の過去の職務経験が有力な参考資料になります。等級を決めたら、同じ等級の既存の社員との兼ね合いで具体的な賃金額を決めます。

 

この既存社員との兼ね合いというのは、年齢や経験年数が同等である既存社員より少し下に持ってくるというのが一般的です。少し下であるのは、わが社での勤続年数がゼロで、仕事ができるのかできないのか、不透明なところがあるからです。仕事ができれば、後から特別昇給させてやれば良いし、仕事ができなければそのままにしておけば良いという、オプション的な考え方をとります。いずれにしても、ひとことでは言い表せない微妙な決め方をします。それでも、いきなり具体的な金額を決めるのに比べれば、ずっと決めやすくなります。

 

もちろん等級は中途採用社員の賃金を決めるときだけに役に立つわけではありません。

 

既存社員でも、「この人の賃金をもっと上げてやりたいなぁ」というとき、「ではいくら上げる?2万円?3万円?」というように具体的な金額から入るのではなく、等級を上げても良いかどうかを検討します。等級が上がることを昇格といいますが、昇格させたら、おのずと賃金は上がります。後で述べる定期昇給でも賃金は上がりますが、昇格した場合はこれに比べてずっと大幅に上がります。

 

このように、個人の賃金を決めるとき、まず等級を決め、その中での具体的な金額は定期昇給や特別昇給で決まります。等級制度とはこのように、2段階で個人の賃金を決める仕組みです。

 

上で「このくらいの○○の人にはこのくらいの賃金」と述べました。ここに何が入るかで賃金制度の性格が決まります。「能力」という字が入るならば能力給、「職務」という字が入るならば職務給です。

 

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