12-4.達成度を上げるために簡単な目標を上げてくる?

前記の式でいう難度とは、「その人にとっての難しさ」ではなく、「客観的にみた難しさ」です。同じことをするのでも、能力が高い人は易しいと感じ、能力が低い人は難しいと感じます。MBOでいう難度とはこのようなものではなく、誰でも同じ基準で判断したものです。体操競技で使われる「E難度」や「F難度」という言葉と同じです。MBOに対する代表的な批判として、「達成度を上げるために簡単な目標を上げてくる」というものがありますが、この問題は難度を介在させることによって解決します。難度はもちろん本人ではなく上司が決めます。

 

客観的に見た難度を使うのでは、能力が低い人がやる気をなくしてしまうという意見があります。しかしその人にとっての難度を使うのでは、逆に能力が高い人がやる気をなくしてしまいます。また、低能力であることに配慮するルールを持ち込むと、評価される側は能力がないように装う、つまり成果を上げない動機を持ってしまいます。
客観的に見た難度ですから、その設定には基準書を用います。しかし難しさといっても知的に高度であるとか、精神的な苦痛を伴うとか、さまざまな質の違いがあります。ありうるすべてのことを盛り込んだ基準書というものは作れません。仮に作ったとしても、評価者は複数いる部下の複数の目標項目について、すべて同じ厳格さで難度を設定することは不可能です。むしろ大まかな基準にしたがって5段階くらいで設定する方が現実的ですし、厳格さにも大差が出ません。そのうえで他の評価者と難度設定のすり合わせをすれば、厳格さのばらつきはなお小さくなります。

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