前回は中間時点における、目標の振り返りと修正についてお話ししました。今回は期末の業績(達成度)評価についてお話しします。
- 業績評価は①自己評価、②上司評価、③評価基準のすり合わせ会議、④評価面接、⑤評語決定会議、⑥フィードバックという流れをとります。
いろいろな評価手法の中で、自分で自分を評価することはMBOの特徴といえます。自己評価には①評価される側の公正感を高める、②効果的に仕事を進める方法や仕事を通して学んだこと、努力の必要な点などに関する洞察を促す、③目標を達成できた場合はより高い目標を設定し、達成できなかった場合はいっそうの努力や方法の改善を促すという効果があります。「情意」や「能力」などを評価対象とする、伝統的な評価制度でも自己評価を導入する会社がありますが、ほどなく全員が満点をつけて出して来るようになり、中止に追い込まれます。
自己評価といっても、達成度が何パーセントであったかを特定するわけではありません。あくまで達成状況に関する事実を申告します。たとえば「携帯電話の新規販売台数〇〇台」というような目標であれば、結果は何台であったかを申告し、「○○計画を策定する」というような目標であれば計画書を添付します。そのうえで期中に起こった、考慮して欲しい環境変化や特殊要因をシートに記入します。数値的な目標であれば達成率は誰の目にも明らかですが、定性的な目標の場合は人によって異なります。当然本人は他人より高く評価する偏りがあります。上司による評価が、甘めである本人評価の影響を受けないように、本人は達成度を特定しません。
自己評価ではまた、当初目標に含まれていなかった成果事項のうち、考慮して欲しいものについて「事後的な目標」という形で申告します。MBOの問題点として、目標外の活動に対する取り組みを抑制させるということが指摘されますが、それはこの「事後的な目標」で解決できます。
(参考文献)古川久敬、柳澤さおり、池田浩『人的資源マネジメント―「意識化」による組織能力の向上』2010、白桃書房)