23-9.再雇用者の賃金をどう決めるか

ともあれ、現状ではまだまだ、継続雇用の手段は再雇用が中心です。その場合の賃金をどうするかについて考えてみます。ただし再雇用社員(便宜的に嘱託社員と呼ぶことにします)のために特別な仕事を用意するタイプではなく、正社員時代と同じ仕事、同じ所定労働時間で働くタイプを前提にします。

 

まず基本給は「定年到達時基本給×α」とします。定年到達時の基本給にはもちろん個人差があります。αに入る数字はその会社の財政事情で決めますが、一般的にいって0.85以上は欲しいところです。人は15%異なると、重さの違いがわかるといいます。15%以上賃金を減らすと、それ以上に労働意欲が下がってしまう可能性があり、そうなると会社にとってマイナスです。

 

賞与は現役員と同じ基準で支給します。基本給が実質的に現役時代と同等であるのに、賞与だけ別の基準で決めるとか、支給しないとかいうのでは不均衡です。

 

同様の理由で、諸手当も現役社員と同じベースで支給します。ただし管理職手当や役職手当というような、残業手当の定額払い的な性格のものは支給しません。対外的に「部長」や「専任部長」と名乗ることは構いませんが、管理職扱いはしません。正社員でない人が、しかも正社員である管理監督者が別にいる状況で、管理監督者であると主張することには無理があります。残業をさせたら残業手当を払いますが、よほど緊急の場合を除いて残業そのものをさせません。嘱託社員は「幹部候補生」ではありませんから、義理残業やつきあい残業をする必要がありません。

 

定期昇給もやはり行います。嘱託社員は最大でも5年間しか勤めません。昇進はありません。退職金もありません。このように考えると、定期昇給を行う意味は小さいように思えます。これが多くの企業で嘱託社員に対して定期昇給を行っていない理由であると推測されます。しかし前出の藤波・大木論文は、昇給がないことが嘱託社員のモチベーション欠如につながっていると指摘しています。小さなことであれ、差別されると悲しいのが人情というものです。

 

一般的な傾向として、企業は嘱託社員の処遇に関して、やや無頓着すぎます。確かな根拠もなく、賃金は定年到達時の4~7掛けにして、手当も賞与も昇給もなしというところが少なくありません。早い話がほったらかしです。いくら賃金を低く抑えても、ほったらかしにされていると感じている人が戦力になるはずがありません。

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