24-8.褒美は与えるが罰は与えない

提案とその承認だけで評価されるとしても、その実行には必ず提案者が関わることになります。ここで、失敗したら責任を追及されるとしたら、依然「下手に提案などしない方がわが身のため」という状況が続きます。

 

そこで、プロジェクトが成功した場合はさらに高く評価するが、明らかな怠慢や過失を除いて、失敗しても責任を追及しないことにします。うまくいったらほめてつかわし、失敗してもお咎めなしというのはおかしいような気がしますが、リスクに挑むことが重要である世界ではよくあることです。それこそ役員報酬として多用されるストックオプションや株式供与もそうです。成功したら大金が入りますが、失敗しても罰金を取られるわけではありません。スポーツの世界でも、負けたら罰金という報酬体系はありません。

 

人間には「損失回避」といって、1円得した時の喜びより、1円損した時の悲しみの方を大きく感じる傾向があります。また、不運が起こる確率を幸運が起こる確率よりも過大に見積もる傾向もあります。たとえば20代の死亡率は1000人に1人未満です。これは1000本に1本当たりが入っているくじと同じです。そんなくじを毎月買う人はまれでしょうが、生命保険には毎月多くの人が掛け金を納めています。

 

人間にはこのような心理があるので、失敗したら罰を受けるという契約はひどく魅力がないものに映り、引き受け手がいなくなってしまいます。

 

もっとも、あまりにも失敗を続けると、「あの人はダメな人だ」という評判が定着し、以後使ってもらえなくなるという形での制裁は受けます。失敗に対する罰はこれで十分です。

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