25-12_何に対して払うか③_持続期の課題は利益と顧客の定着

持続期とは初期投資が終わったあとの、その状態を持続すべき時期のことです。事業が軌道に乗った状態で、世の中の多くの事業はこの段階にあります。

 

持続期にある事業は使用総資本営業利益率や売上高営業利益率などの、利益率を重視します。営業パーソンの業績指標もこれらの指標に貢献するものを採用します。

 

利益率を上げる方法として、まず利益率が高い顧客に対して販売することがあります。この場合営業パーソンには、利益率が高いセグメント(分類)の顧客に対する売り上げについて、他より高い歩合を設定します。

 

あるいは利益そのものに歩合を払うという方法もあります。その場合は粗利益(売上高-売上原価)を指標にします。「マルチコスト法」といって、粗利益から旅費交通費や輸送費など、企業が独自に決めた費用を引いた利益に対して歩合を払うこともあります。営業利益や経常利益は個別の営業パーソンが制御できないので指標にしません。

 

特定のセグメントに対して集中的に売るのではなく、逆に幅広いセグメントに対して売るという戦略もあります。特定のセグメントに集中していると、そのセグメントが小さくなったときに売るべき相手がいなくなってしまいます。現在であれば若者相手の事業がその典型です。

 

持続期にはリスクを分散するために、幅広い顧客を開拓するという戦略もあります。その場合は新しいセグメントに対する売上に対して高い歩合を設定します。集中と分散のどちらを選ぶかは企業の判断によります。

 

持続期にある企業が直面する市場の多くは成熟していて、もはや拡大が期待できないことが多いものです。そういう場合は市場内でのシェア(占有率)を追求します。

 

シェアを拡大するためには、まず既存顧客に定着してもらうことです。定着していれば取引を増やしてくれることもありますし、他の顧客を紹介してくれることもあります。定着率を高く保つためには、営業パーソンに、担当顧客の数に応じて歩合を払います。

 

IT系のサービスには、利用料を1年分まとめて前払いする方が、1か月ずつ払うよりも割安になるような料金設定が頻繁にみられます。紙の雑誌の定期購読もそうです。これらは、もちろんその方が会社の資金繰りが楽になるという理由もありますが、長期の契約をする顧客ほど定着率が高いという事情もあります。これを営業パーソンの歩合に置き換えるなら、長期前払いの契約ほど、それを獲得した場合の歩合を高くします。

 

顧客満足度は最も重要な顧客指標です。顧客満足度に歩合を払うことができれば強力な営業ツールになります。

 

しかし実際には、顧客満足度に関して信頼できる数値を得ることは、調査の素人には困難です。専門の市場調査会社によるわけでない、ましてや答えても何ももらえないアンケートやインタビューに、高い率での誠実な回答はまず期待できません。

 

その代わり、顧客満足を左右するものについて歩合を払うことは可能です。たとえば顧客希望納期遵守回数や顧客への提案回数(見積書や提案書の提出件数)です。

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