25-4.まずは小さな割合で始める

業績給制度を作る場合、まず固定給と業績給の割合を何対何にするかを決めます。その際、100%業績給というのは違法です。労働基準法は、出来高制などの労働者でも、労働時間に応じた一定額の賃金の保障をしなければならないと定めています。

 

保障しなければならないのは最低賃金法で定める賃金です。固定給と業績給を合わせた金額がこれ以上であれば、さしあたり実定法には違反しません。

 

ただし、これはタクシー運転手に限った話ですが、厚生労働省の通達(1989年)で、歩合給制度が採用されている場合には、労働時間に応じて、固定給と合わせて、通常の賃金の6割以上の賃金を保障せよというものがあります。他の業種でも、通常はこれに準じるのが無難でしょう。

 

賃金の期待値(普通にやっていればこのくらいはもらえるという金額)は、リスクがあるにもかかわらず完全固定給の人と同じでは、誰も営業をやりたがりません。より高くする必要があります。

 

一般的に、努力が成果を左右する割合が高いほど、業績給の割合を高くします。しかし導入の当初は、業績給の割合を低く抑えます。固定給はそれまでどおりとして、それに対して付加的に業績給をつけます。全体で固定給の2%というように、小さな割合でつけます。2%は会社からの持ち出しになりますが、業績給を導入したら、営業職がこれに全く反応しないということはありえません。いくらかは会社の収入が増えるはずです。

 

これでうまくいったら(支出が増える以上に収入が増えたら)、業績給をもう少し増やします。それでもうまくいったら、今度は固定給の一部を業績給に移行し、さらに業績給を増やします。これを繰り返して最終的な落としどころを決めます。図に示したようなイメージです。

 

小さな割合から入るのは、業績給制度は、うまくいかなかったら歩合を下げるというわけにはいかないからです。最初から業績給の割合を大きくすると、トップクラスの人は大きな報酬を手にします。そこで業績給の割合を下げると、トップクラスは報酬が減ってしまいます。その結果、優秀な人ほど力を出し惜しむようになってしまいます。

 

 

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