フェファーモデルで重要なことは、7つの条件のうち一つや二つに的を絞って個別に採用しても、効果はないばかりか、むしろ逆効果だということです。
すべてを満たせというのは遠大な目標に思えるかもしれませんが、これは直観的に考えてもわかることです。他の労働条件がどれほど良くても、賃金が低くては、社員を引き留めておくことができません。あるいは他の条件がすべてそろっていても、教育訓練を受けていない社員が能力を向上できるわけがありません。
また、これら7つの施策を実行したとしても、そこから果実を得られるまでには時間がかかります。これこそが、企業が人材活用の施策を後回しにしがちな最大の理由でしょう。
しかし競争戦略や品質、製造技術、研究開発、人的資源管理のなかで、労働生産性や従業員一人当たり利益に対して最も大きな影響を与えている経営機能は、人的資源管理であるという研究結果があります。すぐには実行できなくても、成功のための条件を知っているのと知らないのとでは、必ず大きな差が出てきます。
(参考文献)
須田敏子『HRMマスターコース_人事スペシャリスト養成講座』2005、慶応義塾大学出版会)