26-6.幅広い社員教育

5番目は幅広い従業員層、幅広い知識分野にわたる教育訓練です。

 

1995年といささか古いデータになりますが、北米大陸で、日本本社の自動車メーカ

ーは、米国本社のそれの5倍の時間にわたる新人教育を行っていたというデータを、フェファーは紹介しています。

 

これは必ずしも万国共通の現象ではありませんが、日本では、企業規模が大きいほど賃金が高いのが当たり前であるという認識があります。大企業ほど労働生産性(従業員一人あたり付加価値額)が高いためです。労働分配率(付加価値に占める人件費の割合)はむしろ小規模企業ほど高く、中小企業の経営者が従業員に対して気前が悪いというわけではけっしてありません。

 

ではどうして大企業は労働生産性、ひいては賃金が高いのでしょうか。東京大学教授の玄田有史氏の分析によると、それは訓練の差です。大企業と中小企業との間の賃金格差に関して、資質の違いの影響が、訓練の違いの影響を上回る場合はほとんど見られないということです。

 

たしかに教育訓練の実施率は、企業規模が大きくなるほど高くなる傾向が明瞭にあります。厚生労働省の『能力開発基本調査』(平成28年版)をみると、1,000人以上の企業では86%正社員に対してOFFーJT(職場外教育訓練)を行っているのに対し、30人~49人の企業でその割合は55%にすぎません。

 

(参考文献)

玄田有史『「資質」か「訓練」か?-規模間賃金格差の能力差説-』(『日本労働研究雑誌』1996年6月号所収)

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