29-1.最も満足度が低い文系大卒

このページで採用の問題を採りあげるにあたって、求人情報誌や求人チラシを多数集めました。それらをみると、応募の条件としてもっとも多く設定されているのが学歴です。法律で年齢制限が原則禁止されているので、条件はほぼ学歴のみといっても過言ではありません。

 

それとなぜか、履歴書に写真を貼ることを強く求めています。限られたスペースで「写真を貼った履歴書を送ること」というメッセージを伝えるためと思われますが、「歴貼」などと書いたりして、涙ぐましいほどです。

 

企業が持つこれらのこだわりには合理性があるのでしょうか。高学歴の人や若年の人は本当に狙い目なのでしょうか。顔写真に意味はあるのでしょうか。

 

政策研究大学院大学の黒沢昌子教授によると、転職者について「学歴ならびに教育訓練歴が企業・従業員それぞれの満足度に与える影響を推計したところ、企業側の満足度には受けた訓練・研修の種類や学歴による差は観察されなかった」ということです。非常に大雑把に言い換えれば、中途採用者を学歴で選んでも、良い人材が得られるわけではないということです。

 

最終学歴別に、企業側の従業員に対する満足度(「この人を採用して良かった」と思う気持ち)をみると、高い順に「専門・専修学校卒」→「大学・大学院卒(理系)」→「中学・高校卒」→「短大・高専卒」→「大学・大学院卒(文系)」となっています。高学歴者ほど満足度(会社側が「この人を採用して良かった」と思う気持ち)が高いという傾向はみられません。

 

専門学校や大学・大学院理系出身者に対する満足度が高いのは、これらの学校を卒業した人は、たとえば土木工学科を出て建設会社に就職するというように、勉強したことが比較的そのまま生かせるような仕事に就く場合が多いからであろうと推測されます。

 

けっきょく技術者や専門職はともかくとして、学校で学ぶことと就職後の仕事に関連性がない、営業職や事務職の採用において、学歴上の資格設定は、戦力になるかどうかという点ではほとんど意味がないといえます。

 

(参考文献)

黒澤昌子『円滑な転職のための環境整備―知らせる仕組みと知る仕組み』(2003頸草書房『成長と人材』所収)

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