30-1.筆記試験は必要

厚生労働省『新規学卒者の離職状況(平成23年3月卒業者)』によると、大卒で32%、高卒で40%が卒業後3年以内に離職しています。離職率は小規模な企業ほど高く、大卒者の場合、1,000人以上の事業所では23%、30~99人の事業所では40%が3年以内に離職しています。中小企業の採用で、3人に一人程度の割合で期待外れが起きるのは仕方がないことです。

 

しかし期待外れの中には、避けようと思えば確実に避けられたものもあります。筆記試験で測定できる能力の不足によるものです。

 

社員が分数もわからないとか、漢字が読めないとか嘆く経営者の方は少なくありません。たしかにそれでは大きな戦力にはならないでしょう。しかし、残念ながら責任は採用段階で分数や漢字の試験を行わなかった会社側にあります。

 

野口悠紀雄・早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問によると、ファイナンス大学院を志望する学生の多くが、分数の計算ができないそうです(『実力大競争時代の「超」勉強法』)。社会人経験があるから、あるいは大卒だから、基礎的な読み書きそろばんの能力は持っているはずだと思い込むのは誤りです。採用に筆記試験は必要です。

 

就職採用向けの、知的能力全般のテストとしては「厚生労働省編一般職業適性検査」があります。これはアメリカで7万以上の職務を分析したデータを基に開発されたテストを日本向けに翻訳したものです。特定の分野に関する能力テストとしては数的能力テストや言語能力テストなどがあります。「コンピュータ職適性判断テスト」など、特定の職種向けの能力テストもあります。

 

これらのテストは、点数の上位者から優先的に採用するというように、誰を採用するべきであるかを知るのには役立ちませんが、一定以下の点数の人は不採用とするというように、誰を採用すべきでないかを知る上では役に立ちます。

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