33-2.効果を上げるために評価する

では訓練、特に講義をすることは無駄なのでしょうか。

 

訓練の効果を高める有力な方法のひとつに、「カークパトリックの4段階評価」というものがあります。すなわち

 

レベル1:「反応」(訓練に対して満足したかどうか)

レベル2:「学習」(訓練で扱った内容を理解したかどうか)

レベル3:「行動」(訓練で扱った内容を実際において活用できたかどうか)

レベル4:「業績」(訓練で扱った内容が業績に貢献したかどうか)

 

の4段階で評価します。

 

「反応」の評価は、民間のセミナーではアンケートという形でよく行われています。ここで良い結果を得ることが成功への第1歩です。主催者側がいかに受講者のために良かれと思ってやっていても、受講者から歓迎されない訓練が効果を上げるはずがありません。しかし受けが良ければ成功というわけではありません。訓練は娯楽ではありません。

 

「学習」の評価はテストという形で行われるのが一般的です。前回このページで例示したように、「目標設定期における上司の役割について、簡単なメモを見ながら説明できるような受講者が6割を占めれば、訓練として合格とする」というのはこのレベルの評価です。

 

「行動」の評価は訓練で扱った内容が実務でどれだけ活用されているかをみます。訓練の直後には実行されているのが当たり前なので、3ヵ月程度あとに行います。受講者本人に、やっているという自覚があるかどうか聞いてみたり、その受講者の上司や同僚、部下に対して、訓練の前後で変わっているかどうか、訓練を受けていない社員と比べて違いがあるかを聞いてみたりします。もちろんこれは、本人は「変わった」と言いたい偏りを持っていますし、上司や同僚からの評価は主観に左右されるという難しさがあります。そもそも聞き取り調査ということ自体が、アンケートやテストに比べて格段に難しいことです。

 

「業績」の評価とは、訓練の結果として売上やコストなどの業績指標に変化が現れたかどうかです。これは「行動」よりさらに難しい評価です。たとえば訓練のあとで売上が上がったとしても、それは訓練の成果なのか、世の中全体の景気が良くなったからなのか、魅力的な新商品が登場したからなのかはなかなか特定できません。

多変量解析的な手法を利用すれば分析も不可能ではないでしょうが、そこまでやるのは現実的でありません。結局「業績」は「学習」の評価結果と「行動」の評価結果、そして売上やコストなどの数字を比較して総合的に判断するのが現実的です。たとえば「学習面でも行動面でも成果が上がっていながら、売上はは下落」という状態が何期も続いており、その間に目立った条件の変化がないとしたら、その訓練は業績への効果がないと評価されても仕方がありません。

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