36-1.やはり賃金は重要

せっかく教育訓練をしても、社員に辞められてしまっては大損です。今回は辞められない方法についてお話しします。

 

多くの中小企業が、社員に辞められることを人材育成上の課題としています。今回は教育訓練を施した社員に辞められないための方法について考えてみます。

 

辞められないために経営者にできることの第一は、やはり魅力的な賃金です。

 

労働経済学は、他の企業に行っても使えるような技能については、それを修得するための費用を企業が負担すべきでないと教えます。技能を身につけて生産性が上がたとき、それまでどおりの賃金を払っていたら、競合企業に引き抜かれてしまいます。それを防ぐためには賃金を上げなければならず、結局、訓練費用を回収できません。そういう技能は社員に自費で、プライベートな時間に修得させ、技能が上がったあとに彼女あるいは彼の賃金を上げてそれを「買え」というわけです。

 

しかし実際にそんな方針でいたら、企業はいつまでたっても技能ある社員を獲得できません。多くの企業が社員を大学院や専門学校など、他社でも使える技能を養成する教育機関に派遣しています。

 

こうした社員を引き抜かれないためには、まず賃金です。人材育成に熱心な企業は同地区・同業の賃金水準を強く意識しています。引き抜かれるとしたらこの層の企業だからです。

 

経営者にとっては厳しい話かもしれませんが、賃金や賞与を世間並みにするだけでは不十分です。離職率が高い企業の特徴のひとつに、昇進が少ないことがあります。昇進は会社の裁量事項であり、させなくても何ら責められるべきものではありません。しかし昇進は社員にとって最大のインセンティブです。昇進しなければ、賃金は大幅には増えません。これなしでやる気を維持するのは困難です。

 

金銭で報いるのが難しい場合は、時間で報いるという手もあります。閑散期にまとめて年休を消化させたり、週休3日制(その分1日の労働時間が長くてもかまいません)やフレックスタイムを導入したりします。

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