40-2.主要業績指標における目標

顧客の視点における目標は全体の15から20%のウェイトを占めるようにします。顧客の視点における目標は「主要業績評価指標」といって、良い顧客をたくさん持つということを表す数字における目標と、「差別化要因」といって、顧客を引き付ける魅力に関する目標を、それぞれ少なくとも一つは設定するようにします。

 

主要業績指標の基本は「顧客満足度」「新規顧客獲得率」「顧客定着率」「顧客の利益性」「市場占有率(シェア)」の5つです。

 

顧客満足度

 

顧客満足度とは、顧客が感じた、成果と期待の格差のことです。期待を下回った時に感じるのが「失望」、期待通りだった時に感じるのが「満足」、期待を上回った時に感じるのが「喜び」です。コトラーは、「単に満足しただけの顧客は、もっと良いオファーがあれば簡単に乗り換えてしまう」と言っています。

 

満足度は質問状や電話でアンケートを行って調べます。可能であれば、営業パーソンや販売員ではなく本社が、定期的ではなく抜き打ちで調査するようにします。

 

顧客定着率

 

「5対25の法則」といって、顧客定着率が5%改善すると利益率が25%改善するという経験則があります。業種によっては85%改善するという説もあります。

 

「1対5の法則」といって、新規顧客に対して販売するコストは、既存顧客に対して販売するコストの5倍であるという経験則もあります。顧客の利益性は、顧客として定着している期間が長くなるほど高くなります。

 

新規顧客獲得率

 

平均的な企業の顧客定着率は90%程度と言われています。そうであれば、新規顧客を獲得しない限り、顧客の総数は、10年後には現在の35%まで減ってしまいます。売上や利益を増やして行こうとすれば、既存顧客を維持するだけでは不可能です。

 

顧客利益率

 

顧客利益率とは収益性が高い顧客の割合です。収益性は営業利益で測るのが最善です。顧客別の粗利益は多くの企業がすでに算出しているはずです。ここから顧客別の営業費や受注費、物流費などを差し引いた数字が営業利益です。

 

しかしいかんせん、営業利益を顧客別に算出するためには「活動基準原価計算」という精緻な管理会計システムが必要です。これは中小企業にとってあまり現実的な話ではありません。その場合は主観によって区別するという方法もあります。顧客を粗利益と販売コストからみて、営業利益率が高いと思われる順にABCの3ランクに分けます。そのうえで、値上げや物流コストの削減などの収益改善策を講じ、「Bランクで〇〇円の改善」「Cランクで○○円の改善」という目標を立てます。

 

市場占有率(シェア)

 

シェアにはさまざまな切り口がありますが、基本は「自社の売上高÷市場全体の売上高」である「売上ベースのマーケットシェア」です。

 

市場といっても、世界もあれば全国も市町村もあります。世界には老若男女さまざまな人がいます。市場には地域や性別、年齢以外の切り口も無数にあります。このように市場を細分化することを「セグメント化」といい、自社が重点的に攻略しようとするセグメントのことを「ターゲット」といいます。シェアの目標は、自社がターゲットとする市場における数字で設定します。ターゲット市場全体の売上高など、通常はわからないものですが、それは推定で十分です。

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