ここでは賃金表の作り方についてお話しします。
賃金表とは、各等級の賃金の上限と下限を定めたものです。賃金表を作る手順は次のとおりです。
1.最上位等級と最下位等級の下限値を決める
2.等級間倍率を決める
3.各等級の下限値、上限値を決める。
1.最上位等級と最下位等級の下限値を決める
まず1等級の下限値を決めます。これは理論上の、わが社の最低賃金です。法定最低賃金を月給に換算したもので良いでしょう。東京都の場合、最低賃金は1時間あたり約910円です(2015年9月改定)。これを月給に換算すると(月間所定労働時間は法定労働時間の上限である173.8時間であるとします)158,158円になります。きりの良い数字にするために159,000円としましょう。
次に最上位等級(仮に15等級とします)の下限値を決めます。各社で、「最上位等級の人には最低でもこれだけ出したい」というものを検討して決めます。ここでは『ホワイトカラー職種別賃金実態調査(2011年度)』を参考にして決めることにします。これによると、部長職で、「最低年収者の平均」の「月例給与」が最も高いのは「法務・特許」部長の605,000円です。この数字を使って15等級の下限値とします。
2.等級間倍率を決める
次に等級間の賃金格差である倍率を決めます。
159,000円から605,000円までの間に15等級あり、それぞれが等倍の間隔で並んでいるとすると、倍率は
605,000÷159,000=3.81
3.81の14乗根で、約1.11倍になります。
15等級なので14乗根です。等級数がN個だとすると、(N-1)乗根をとります。○乗根とは、○乗するとその数になるような数です。たとえば8の3乗根は2です。2を3乗すると8になります。
一般化すると
等級間倍率=(最上位等級の下限額/最下位等級の下限額)の(N-1)乗根
となります。
この数字を使って、下限値はひと等級上がるごとに約1.11倍に設定します。正確に1.11倍というと非常に細かい数字になるので、1,000円未満を四捨五入するなどしても良いでしょう。
3.各等級の下限値と上限値を決める
最後に各等級の下限値と上限値を決めます。
下限値は上述のとおり、ひと等級上がると1.11倍に設定します。
上限は下限の1.5倍にします。したがって上限値も、ひと等級上がると1.11倍になります。上限が下限の1.5倍である理由は、同じ仕事をする人でも成果には個人差があり、それは最大で1.5倍程度と思われるからです。
これで完成です。簡単すぎてありがたみがないように思われるかもしれませんが、必要以上に複雑なものを作る必要はありません。
等級間格差を等倍、「ひとつ上の等級に昇格したら賃金が何円上がるか」という金額は、上に行くほど大きくなります。つまり等級間格差は累進的になります。
格差を累進的にする理由は、会社に人選を慎重に行わせるためです。組織は上位の階層になるほど人選を慎重にしなければなりません。補助職の中から一般職を選ぶのにそれほど神経質になる必要はありませんが、課長の中から部長を選ぶのに失敗したら大きな混乱が起こります。人選を慎重にさせるために最も効果的なのは、昇格に伴う昇給幅を大きくすることです。
賃金表の例
等級 |
基本給 |
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 |
159,000~238,500 175,000~262,500 192,000~288,000 212,000~318,000 233,000~349,500 256,000~384,000 282,000~423,000 310,000~465,000 341,000~511,500 375,000~562,500 413,000~619,500 454,000~681,000 500,000~750,000 550,000~825,000 605,000~907,500 |