1-2.非正規への置き換えには限度がある

格差社会と言われるようになって久しいですが、実際に起きていることは格差の拡大ではなく低所得者の増加です。格差社会というと、高所得者が増える一方で低所得者が増えることを想像しますが、世帯年収1千万円以上の世帯は減っています。その一方で250万円以上の層が増えています。高所得者の減少以上のペースで低所得者が増えており、結果として格差が拡大している状況です。

 

低所得層増加の原因は、いうまでもなく労働者の非正規化です。男性非正規労働者の比率は、1990年には8.7%であったものが、2016年には22.1%になっています。バブル崩壊以後の、経済の停滞のもとで、労働生産性の低下に対する、企業側の有力な対応は、労働者の非正規化であるといえます。

 

正社員が辞めるたびに、インセンティブ(成果を上がれば報われる仕組み)も雇用保障もない非正規社員で置き換えることには限界があります。そろそろ正社員の賃金制度を改革すべき時期を迎えています。

 

(参考文献)
榊原英資「中流崩壊 日本のサラリーマンが下層化してゆく」(詩想社、2015年)
八代尚宏「労働市場改革の経済学」(東洋経済新報社、2009年)

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