4-4-1.等級制度の作り方ー何等級構成にするか

前回は等級とは何かということについて基本的な考え方を述べました。今回は具体的な等級制度の設計の仕方について述べます。

 

等級制度を設計するときは、まず何段階の構成にするのかを決めます。

 

1990年代のアメリカでは、ブロードバンディングという動きが起こりました。インターネット回線の話ではありません。賃金の等級を幅が広い括り(ブロードバンド)にしようという動きです。ゼネラルエレクトリック社が、それまでの14等級構成から4等級構成に改めたケースが有名です。4等級構成の新しい制度では、それぞれの等級は賃金の上限値が下限値の2.1~2.6倍、ひと等級上がると下限値は40%強上がるという構成でした。

 

このような「広い等級」の利点は、まず職務評価のコストが低いことがあげられます。経済環境の変化に伴って、仕事の難度や負荷は日々変わります。細かい等級に分けた中に職務が置かれていれば、ちょっと時間がたつと等級と職務価値の逆転現象が起きてしまいます。ですから職務価値の見直しは頻繁にしなければなりません。その点、4段階しかない等級であれば、見直しはそれほど頻繁にしなくても済みます。また等級の幅が広いとそれだけ賃金上昇の余地が大きく、社員の労働意欲を高めることができます。

 

しかし広い等級には問題もあります。まず、上記の長所と表裏一体ですが、ともすれば人件費が割高になってしまうことです。また、ひとつの等級に多くの職務が詰め込まれているので、職務価値と賃金の逆転現象が頻繁に起きてしまい、社員からみた納得度が低下するという問題もあります。

 

広い等級と狭い等級のどちらが良いのかというと、狭い等級です。ブロードバンディングは結局普及しませんでした。アメリカの、賃金管理に関する情報機関であるワールドアットワークが2003年に行った調査によると、ブロードバンドというべき制度を採用している企業の割合は9%に過ぎず、従来型の等級制度を採用している企業の割合が72%でした。

 

具体的にどのくらいの等級数が適切なのかは、一般化できません。しかし後述するように、等級基準の決め方にはさまざまな方法があります。「・・・する職務」というように文章的に表現する場合、20も30もの等級基準を考えることは困難でしょう。職務の大きさを数値化する方法ならば、いくらでも細分化することができます。その場合も、その会社の職務にどれほどの種類があるかが関係してきます。

 

等級の数は最初から何いくつと決めておくのではなく、実態を見て決めるべきです。

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