4-4-5.等級制度の作り方-等級基準の決め方-得点要素法

得点要素法は、分類法を精密に行う手法です。前述のとおり分類法には、すべての職務の基準を正確に定義できるわけではないという欠点がありました。そこで「知識の面ではこのくらい、責任の面ではこのくらい、意思決定の面ではこのくらい、・・・」というように、何とおりもの組み合わせを可能にする方法です。

 

得点要素法では、会社の中にあるそれぞれの職務について、次のような基準で①知識・技能、②責任、③意思決定、④複雑さ、⑤対人関係という5つの要素別に得点付けをします。

 

  1. 知識・技能

得点

内容

25 

1ヵ月程度の訓練や短期間の実務経験を必要とする職務

50 

1~3ヵ月程度の集中訓練,または1~6ヵ月程度の実務経験を必要とする職務

75 

16~12ヵ月程度の集中的な教育訓練,または2年程度までの実務経験を必要とする職務

100 

1~2年の専門教育・職業教育,または3~5年の実務経験により形成される専門的・技術的な知識・技能を必要とする職務

125 

専門的資格につながる2年以上の専門教育に加えて、2年以上の実務経験により形成される高度の知識・技能,またはそれと同等の知識・技能を必要とする職務に5年以上従事して形成される高度の知識・技能を必要とする職務

150 

広範な高度の知識・技能を必要とする職務であって,レベル5の職務で5年以上の経験を必要とする職務

 

  1. 責任の程度

得点

内容

25

企業全体の業績への影響がほとんどない職務。職務上の失敗は数時間内で明らかになる職務。管理責任は所属する係の使用する器具・機械に限られる。

50

企業全体の業績への影響は小さい職務。職務上の失敗は簡単にみつけられ,数日内に明らかになる職務。管理責任は所属する係の使用する器具・機械に限られる。

75

所属する係・課の業績への影響はかなりあるが,より上位の組織の業績への影響は小さい職務。職務上の失敗はただちにはわからないが,所属する課や部門の業務に悪影響をもたらす職務。定型業務を担当する1~2名を管理する。小さな額にかかわる予算,設備などの管理責任がある。

100

所属する課・部門の業績への影響がかなりあり,企業業績への影響をもたらす職務。職務上の判断の誤りはしばらくわからないが,部門業績をかなり滅ずる。

125

企業の主要事業分野の特定部門の業績責在がある職務。企業業績への影響は大きい。判断の誤りは長期にわたって明らかにはならず、部門や企業の業績にひどい影響を及ぼす。

150

企業の主要事業分野の業績責任がある職務。企業業績への影響はきわめて大きい。判断の誤りを知るのはほとんど不可能である。

 

  1. 意思決定の程度

得点

内容

20

定型的業務であり、業務のすべてが簡単な指示の下で遂行される職務。思考内容は定型化されている。

40

多くは定型的業務であり、上司による密接な監督の下で遂行される職務。多くの業務は簡単な規定・手法の適用ですむが、時折工夫が必要である。思考内容は概して定型化されている。

60

上司による一般的指示と監督の下で遂行する職務。仕事の手順は示されているが、時折工夫が必要である。しかし複雑な業務は上司に任せることがある。

80

職務遂行は定められた拡囲内でかなり自由に行なうことが可能な職務。意思決定を必要とし、資料・情報を分析して問題解決する能力が求められる職務。上司による指導は必要なときのみ行なわれる。思考内容はある程度の想像力を必要とする。

100

職務遂行は、いくつかの重要な決定事項を除けば自由に行なうことができる職務。業務目的、業務目標や業務遂行基準を除けば、上司による指示はほとんどない職務。思考内容には意思決定や計画作成の面で独創力・想像力を必要とする。

120

一般的な方針の下で職務遂行する。意思決定では高度の判断力と先見力を必要とし、上からの指導はない職務。新しい情勢に対応するために常に創造や工夫を必要とする職務。

 

  1. 職務の複雑度

得点

内容

15

繰り返し作業が基本の職務。

30

繰り返し作業であるが、さまざまな技能を必要とする職務。

45

多様性のある業務を担当する職務。しかし役割や業務特性には共通性がある職務。

60

特定の職務の範囲内で,多様な業務や意思決定を行なう職務。意思決定の内容はしばしば変化する。

75

いくつかの職能にわたる業務や意思決定のある職務。企業にとって重要な変化にしばしば直面する職務。

90

主要な職能すべてにわたる業務や意思決定のある職務。常に生ずる変化への対応が求められる職務。

 

  1. 対人関係の必要度

得点

職務内容

15

ほとんど重要性のない人的対応のみの職務。

30

企業内で日常的に人的対応はあり、同等職位以下の者との情報提供目的の人的対応の職務。企業外の者との対応は儀礼的な対応のみ。

45

情報提供や問い合わせなどのために,他部門の上位者や企業外の者との対応あり。適切な対応を必要とする。

60

非定型的な事項に関して他部門の上司との日常的な対応があり、ある程度の折衝力を必要とする職務。企業外での対応で非定型的な事項の対応や苦情処理を行ない、かなりの折衝力を必要とする職務。

75

企業内外で上級の者と頻繁な対応があり、交渉も行なう職務。かなりの説得力を必要とする。

90

企業内外の最高の者との対応が常にあり、高度のコミュニケーション能力,説得力,交渉力を必要とする職務

資料出所:笹島芳雄『アメリカの賃金・評価システム』(日本経団連出版、2001年)

 

以上のような要素別に職務を採点し、その合計点をもって職務の価値とします。等級基準は次の通り文章ではなく点数です。

 

得点要素法での等級基準①

等級

定義

6等級

500点以上

5等級

400~499点

4等級

300~399点

3等級

200~299点

2等級

150~199点

1等級

150点未満

 

各要素・各レベルの得点設定にも、等級定義の得点設定にも、特にルールはありません。企業独自で設定します。

 

ただ「知識・技能」には他の項目よりも高いウェイト付けをする企業が多いようです。

 

また、1段階違うと15%の得点差をつけるという考え方も多くとられています。各要素で、1レベル上がるにつれて100点、115点、132点、・・・、等級基準も、1等級は500点~、2等級は575点~、3等級は661点~、・・・という具合にです。15%間隔である理由のはっきりしたことはわかりませんが、人間は15%違うと重さの違いがわかるからだという説があります。

 

合計点15%ごとにひとつの等級を設定するとすると、次のようになります。5つの要素の得点の合計は、最小100点(25+25+20+15+15)点、最大600点(150+150+120+90+90)点です。これを15%間隔で区切ると次のようになります。

 

得点要素法での等級基準②

等級 定義
13等級 535  点以上
12等級 465~534点
11等級 405~464点
10等級 352~404点
9等級 306~351点
8等級 266~305点
7等級 231~265点
6等級 201~230点
5等級 175~200点
4等級 152~174点
3等級 132~151点
2等級 115~131点
1等級 100~114点

 

 

▲ページTOP