9-3.理不尽さを受け入れよう

しかし評価を行わず、売上や出来高によって賃金を決めるのが良いというわけではありません。歩合制や出来高制は「1時間働くならこの仕事が一番儲かる」というものにしか人を動かしません。また数字でしか賃金が決まらないならば、人は上司や同僚からの自分の評判を気にする動機がなくなり、協調性がなくなってしまいます。実際、世の中には評判を気にする必要がない仕事もあります。しかしそういう会社の雰囲気は独特で、どの会社でも通用するものではありません。

結局、ある程度の理不尽さは受け入れたうえで、それを縮小させるよう努力するというのが、正しい評価のあり方といえます。小池和男・法政大学名誉教授は「高度な作業の働きぶりは(中略)とうてい数値で表わせず、仕事をよく知る人の『主観的』な判定によるほかない(中略)。主観ゆえに、ある程度の恣意性はやむを得ない(中略)。その上で、その恣意性をなるべくすくなくする方策を考えるほかないだろう」と述べています。

 

(参考文献:小池和男『日本産業社会の神話』2009、日本経済新聞社)

 

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