8-4.賞与の算定基礎賃金は基本給だけであるべきか

「月例賃金」のところにどこまでの範囲を含めるかは、個々の会社の考え方によります。私の考えは「通勤手当を除くすべての賃金」です。当然残業手当も含みます。ただし不合理な手当は月給の段階で廃止することが条件です。

 

「賞与の算定基礎は基本給のみ」という意見におそらく大方の賛成が集まることと思いますが、私は必ずしも賛成しません。賞与においてだけ、ことさら基本給にこだわる理由がないからです。

 

たとえば「家族手当は仕事に関係ないから外す」という意見が予想されます。仕事に関係ないならば、家族手当が本当に必要かどうかというところから議論すべきです。「賃金は労働の対価だ」というのなら(私も全面的にそう思います)、むしろ月例給から先に家族手当を廃止すべきです。

 

賞与の算定基礎に残業手当を含めることには、いっそう大きな反対があるでしょう。しかし残業手当が支払われているということは、必要な労働であり、いわゆる「生活残業」ではないと会社が認めたということであり、それに応じた貢献がなされているはずです。現にアメリカの、賞与に似た制度である「ゲインシェアリング」では、算定基礎額は対象期間の、残業手当も含む総賃金です。

 

残業手当のことを法律用語では「割増賃金」と言いますが、これを割増ではなく「割減賃金」だと言う意見もあります。賞与が算定基礎に入らないために、残業をまったくしなかった人とした人の、年収を労働時間で割った1時間あたりの賃金を計算すると、残業をした人の方が少なくなるからです。このような状態は合理的ではありません。

 

要するにどんな手当であれ、合理性があるものは賞与でも算定基礎に入れるべきです。合理性がないものは賞与に限らず月例賃金からも廃止すべきです。

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