5-5.初任給をどう決めるか

初任給の決め方は次のとおりです。

 

新規学卒者(新卒で入社する人)の場合、初任給は世間的に相場が形成されており、厚生労働省のWEBサイトで調べると簡単に知ることができます。他社との競争があるのに、わが社だけそれより低い金額を提示していては人材を獲得することはできませんから、相場に合わせます。

 

等級を決め、その中での具体的な金額は世間相場に合わせます。このとき、同じ年齢で、先に入社した社員を追い越してしまうようなことは避けなければなりません。そのときは先輩の方の賃金を上げます。

 

新規学卒者でも初めから高度な仕事を任せられるような人もいるでしょうが、一般職としての等級からスタートさせます。たとえば技術職における、その分野の博士号取得者などは、初めから重要な仕事を任せられる可能性が大きいはずです。それでも、第1に会社側は完全に彼女または彼の能力を把握していません。第2に、彼女または彼は専門分野の知識こそ豊富でしょうが、業務遂行に関する一般的な知識は持っていません。それなのにいきなり抜擢することはリスクが大きすぎます。もちろん、上位等級の仕事を十分任せられると判断したときは、早い昇進を躊躇する必要はありません。

 

 

欧米では出身大学の銘柄によって初任給に差をつけることが一般的ですが、日本でこれをやるのは早すぎます。日本はドイツと並んで、世界的に見ても学歴主義が希薄な社会です。しかも年々希薄化しています。こういう社会で、出身校の銘柄によって初任給に格差をつけることは受け入れられません。

 

経験者採用の場合も、まず等級を決めます。そのうえで経験や実績、既存社員とのバランスなどを総合的に考慮して決めます。

 

明治学院大学の黒澤昌子教授は、転職者の、関連経験年数(転職後に担当する仕事に関連する仕事を過去に経験した年数)の効果について調べました。その結果、関連経験年数が長い従業員ほど、企業側の満足度が高くなる(「採用して良かった」と思う)一方で、従業員側の満足度が低くなる(「入社しない方が良かったかも」と思う)ことを明らかにしました(佐藤博樹・玄田有史編『成長と人材』勁草書房、2003年)。このことは従業員が持つ経験が、企業にとって役に立っているにもかかわらず、賃金には十分反映されていない可能性を示しています。

 

経験を初任給に十分反映しているかどうか、考えてみる必要があります。

 

 

 

 

 

 

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