12-1.目標管理とは何か

前回のこのページで、全社員に適用できる汎用的な評価基準を個別企業が容易することは非現実的であり、個別社員ごとに設定する目標管理の方が評価しやすいということを述べました。今回はこの目標管理について考えます。

 

目標管理は”Management by Objectives and Self-control”(MBO)の訳語です。直訳すれば「目標と自己統制による管理」であり、自己統制が重要な意味を持ちますが、「目標管理」という略称からはこれがすっぽり抜け落ちています。このためどこか管理強化的なイメージがありますが、実際はむしろ管理強化の対極にあり、個人の自律性を基礎におくものです。細かいことまでいちいち指示する管理や、ワンマン経営よりはよほど自由なものです。

 

MBOと一口に言っても、運用の仕方は企業によってさまざまです。そうしたなかで奥野明子・甲南大学教授は次の

手続きを備えているものをMBOとして定義しています。
① 全社目標から個人目標までの目標の連鎖体系が成り立っている、あるいは意識されていること。
② 上司と部下が話し合い、双方が合意する目標を設定すること。
③ 目標は明確であり、時限的であり、目標管理シートなどに記述されること。
④ 上司は部下の援助者・相談者である。特に目標の実行期間中には、上司は部下を放任するのではなく支援すること
⑤ 一定の期間ごとに上司と部下の面接を行い、その期の目標の達成度を評価すること。

MBOの実施率は高く、2006年の段階で79%の企業が実施しています。従業員300人未満の企業でも67%が実施しています。実施率はどこかで急に上がったわけではなく、1980年代からほぼ一定のペースで上がっています。MBOをやっても評価に反映していない企業もありますが、そういう企業は少数派で、2001年の段階で95%の企業が何らかの形でMBOを評価に反映させています。

 

(参考文献)

奥野明子『目標管理のコンティンジェンシー・アプローチ』2004白桃書房)

 

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