24-10.株主資本にもコストがある

加重平均資本コストのうち、負債のコストは金利を負債の金額で加重平均した値であり、容易に求めることができます。支払利息が税金から控除されることを考慮して(1-実効税率)を乗じます。

 

問題は株主資本のコストです。株主資本とは、貸借対照表の資本の部の合計であり、「純資産」あるいは「自己資本」とも呼ばれます。負債には金利という明確なコストがありますが、株主資本については明確ではありません。株主は、利益が上がったらそれを配当として請求する権利がありますが、赤字の場合は無配当でも文句が言えません。

 

では株主資本のコストはゼロなのかというと、そんなことはありません。株主が「これ以下の収益率が続くようだったら出資しない」というコストがあります。株式は値下がりや無配当、倒産などのリスクがあり、債権よりもリスクが大きい資産です。そのコストは負債よりも大きいはずです。ただし明確な数字がなく、推定するしかありません。

 

株主資本コストを推定する方法にはいくつかあり、「資本資産評価モデル」(CAPM)というものが代表的です。しかしこれはやや専門的なので、別の方法をご紹介しておきます。それは「株主資本コスト=配当利回り+配当成長率」とするものです。

 

株主は企業が一定の配当を出し続けることではなく、配当を年々増やしてゆくことを期待しているはずです。配当が一定では株価が上がらないからです。そのように考えると株主資本コストは右の式のようになります。配当利回りとは株価に対する配当の割合です。

 

非上場会社の場合、株価がわかりませんから、配当利回りを算出することは不可能です。配当成長率を予測することも困難です。したがって株主資本コストを直接推定することはできません。

 

そこで、上場会社で自社と類似した事業を営む会社の、これらの値をもって代用します。配当利回りは計算すればすぐにわかります。利益成長率は証券会社のアナリストが予測している、5年程度の成長率を使います。

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