33-3.脱落者を出さない方法

こまで述べてきたのは訓練に効果があったかどうかの評価です。ほかに訓練そのものが適切であるかどうかの評価もあります。

 

たとえば私が専門としている評価と賃金は、結局は数字の話です。「年功序列はだめだ」とか「成果主義でなければだめだ」とかいうのは観念的な話であって、それだけでは実務上何の役に立ちません。具体的にいくら賃金を払うのか、どういう成果にどういう点数をつけるのかという数字の話を避けて通れません。

 

しかし数字の話になった途端、「お客さん」の顔に変貌する人が出てきます。そんなときは正直、限界を感じないこともありません。

 

ここで脱落することを受講者の責任にせず、どうすれば脱落を食い止められるかを考えるかどうかが、良い訓練と悪い訓練者の違いです。

 

訓練そのものが適切であるかどうかは、訓練の途中で小テストのようなものを行って評価します。理解の度合いや、どこで脱落しているのかを把握します。そして、その結果を受けて補完的な訓練を行います。賃金でいえば、「賃金制度作りのための数字の読み方」というようなセミナーを企画します。

 

このように補完的な訓練を活用すれば、必要とする時間の長短に個人差はあるにせよ、どの受講者も、訓練が目標とする水準まで到達させることができます。

 

マナーの話に戻れば、講師を呼んで座学をするというのは正しい選択です。効果が上がらなかったのは訓練がやりっ放しで、事後の評価が欠けていたためです。教育のあとには評価をするという、小学校においてさえ徹底されていることが、企業では欠如しているのが実情です。評価をするのは重い作業ですが、だからこそ、これを徹底することは有効な競争戦略になります。

 

(参考文献)中原淳編著『企業内人材育成入門』(2006、ダイヤモンド社)

 

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