昇進は労働者にとって最大のインセンティブ(頑張る理由)です。いくら実力主義の賃金制度といっても、昇給や賞与をより多く獲得することに血道を上げているとみえる社員はほとんどいません。
昇進が最大のインセンティブである理由の第1は、昇進しなければ賃金が大幅に増えないことです。成績Aを取ればBを取ったよりも多く昇給しますし、多く賞与が貰えます。しかしその格差はわずかなものであり、AとBの間にある努力の違いを購うほどのものではありません。さらに、Aの方がBよりも多いということは確かですが、どのくらい多いのかはその時の会社の業績や景気次第であり、不確実です。これに対して昇進は昇給や賞与よりも格段に大きな賃金上昇を伴いますし、どれだけ賃金が上昇するのかも比較的正確に予想できます。努力に対する、金銭的に主たる報酬は昇進という形で与えられます。
第2に、昇進は組織の中での発言権や地位、裁量権が拡大することであり、賃金と切り離してこの事実だけを見ても魅力的な報酬です。
第3に、ある職位から上の職位への昇進は、さらに上の職位への挑戦権を得ることでもあります。競争に勝利できるかできないかにかかわらず、希望を持てること自体が報酬です。