目標に盛り込むべきこととして、真っ先に思いつくことは売上と利益です。実際、目標を立てている企業のほとんどがこれらを盛り込んでいます。逆に言えばこれら以外の目標を設定していません。やや古いデータですが、関西生産性本部が1985年に行った調査によると、売上高は88パーセント、利益高は87パーセントの企業が目標に掲げています。その次に高いのは原価で、35パーセントにすぎません。
もちろん、売上や利益の目標は必要です。しかしこれらだけの目標というのは、試験にたとえれば「合格するという頂点だけがあり、どの問題集や参考書を何冊暗記するという経路がないようなものです。これでは単なるかけ声と大差なく、目標を立てることの効果はあまりありません。
キャプランとノートンは、高い業績をあげ続けている企業の目標を分析した結果、次の4つに集約されることを明らかにしました。「バランスト・スコアカード」と呼ばれる理論です。
- 財務の視点:財務諸表上の数値に関する目標。売上高、利益、キャッシュフロー、付加価値など。
- 顧客の視点:顧客の質・量に関する目標。新規顧客獲得件数、顧客定着率、顧客満足度指数など
- 社内ビジネスプロセスの視点:業務の効率性に関する目標。納期遵守率、新製品投入件数、歩留まり率など。
- 学習と成長の視点:従業員の満足度や能力に関する目標:従業員満足度指数、資格保有率、有給休暇取得率など。
(参考文献)
ロバート・S・キャプラン、デビッド・P・ノートン『バランス・スコアカード―新しい経営指標による企業変革』(1997、生産性出版)
ロバート・S・キャプラン、デビッド・P・ノートン『キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード』(2001、東洋経済新報社)