以上はアメリカの上場企業の話ですが、これを日本の、非上場の中小企業にあてはめると、次のようなことが言えます。
まず、責任を全うしている限りにおいて、役員の報酬は高額であることが正当化されるということです。仕事の価値は①そこに必要とされる知識・技能、②精神的・肉体的負荷、③責任度、④作業条件で決まります。役員は企業価値(会社の値段)への影響という意味で責任がきわめて大きいからです。
非上場会社の場合、時価総額を直接知ることはできませんが、それは目に見えにくいというだけであって、不変であるというわけではありません。「もし今子細に算定したら」という金額は日々変動しています。
次に、報酬が高額であるべきといっても、必ずしも基本報酬だけで高額である必要はなく、相当部分はむしろ業績連動型の報酬である方が良いということです。基本報酬は一般職→係長→課長・・・という延長線上に平取締役→常務→専務とあれば十分ですが、業績連動型の報酬は従業員の延長線上を超えるリスク(不確実性)とリターン(期待値)を伴うのが良いでしょう。
なお、中小企業は多くがオーナー企業であり、社長やその親族である役員の報酬には、実質的な株式配当が含まれているとみるべきです。もちろん株主が配当を享受するのは正当な権利です。しかしそのような意味での役員報酬は上で述べた限りではありません。本稿で対象にするのはあくまで、雇われ人である役員の報酬です。