20-1.目標外の行動に対して消極的になる

当然のことながら、MBOにも欠点があります。人間が作り出した制度に完全ということはあり得ません。批判の代表的なものとして、目標以外の行動に対して消極的になるということと、評価者の負担が大きいということがあります。

 

まず、目標外の行動に対して消極的になるということについて考えます。たしかにMBOでは、目標の達成状況だけで評価します。他のことは評価されません。当初目標に含まれていなかった成果は「事後的な目標」として評価するにせよ、評価の対象はせいぜい5項目程度に限られます。本来評価の対象にすべきことは、遅刻をしないとか明るく挨拶をするとかいう、社員としての基本的な態度に始まって無数にあります。それらに比べればほんの一部分にすぎません。

 

しかし、必要なことのすべてを網羅した評価が可能かどうかという以前に、MBO以外の評価が、評価対象である行為を促すかという問題があります。企業の間でMBOと並んで採用率が高い評価制度に「・・・しているか」という形で示される複数項目で評価する「人事考課」があります。たとえば「業務を遂行するに必要な知識を持っているか」というような評価項目はどこの会社の考課表にも載っていますが、こういう評価基準を読むことによって、社員が「そうか、知識で評価されるのか。よし、知識を強化するぞ」と思うかどうかは疑問です。もちろん、普通の社員は業務知識を磨こうと日々努力していますが、その動機が評価基準書であるかどうかは不明です。私の経験からいって、おそらく90%以上の社員はこのような、文脈的な評価基準を意識していません。読んでもいません。したがってMBOで知識が評価対象にならないからといって、評価対象になる場合と比べて、知識がおろそかになるというものではありません。MBOはこの点に関して中立的です。

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