さまざまな手当があることは日本の賃金制度の特徴のひとつです。一般的に、アメリカの企業には交代勤務手当、イギリスの企業にはロンドン手当(ロンドンは物価が高いので)くらいしかありません。さらにいえば、「賃金体系」という言葉自体が日本に独特のもので、欧米諸国では基本給(Base Pay)一本なので体系はありません。
手当の歴史は古く、大正時代にはすでに始まっています。内務省が1922(大正11)年に行った調査には、30近い手当または付加給付が記されています。第2次世界大戦中から戦後にかけて、インフレと労働組合からの賃上げ要求に対して、企業側が基本給の引き上げでなく手当の新設によって応じたことが、さらに多くの手当を生み出しました。
現在、日本でも手当は縮小する傾向にあります。厚生労働省の「平成22年就労条件総合調査」によると、所定内賃金に占める手当の割合は14.0%(約46,000円)で、5年前に比べて1.0%ポイント低下しています。この調査が分類する14の手当のうち12の手当が、5年前に比べて支給割合(全企業の何%がその手当を支給しているか)を下げています。
諸手当を廃止することによって人件費を減らしているというわけではなく、この間に所定内賃金(超過勤務手当以外の賃金)の総額は増えています。