役員に対してアイディアの提出を促すために、提案を評価する。結果は提案とは切り離して別途評価するという話をしました。
では経営者は自身の業績をどのように評価すべきでしょうか。今回はこのことについて考えます。
- 経営者の業績指標は利益が基本です。しかし1円でも黒字ならば合格点というわけではありません。企業活動には多くの資金が投じられており、債権者も株主もリスクを負っています。それで1円という、銀行預金以下の収益率に甘んじるわけにはいきません。
ではどれだけの利益を出せば合格点なのでしょうか。ひとつの答えが「EVA®」(経済的付加価値)という指標です。これはコンサルティング会社であるスターン・スチュワートが、それまで「残余利益」と呼ばれていたものを改良して広く普及させたものであり、同社が商標権を持っています。
EVA®の計算式は次のとおりです。税引き後の営業利益のうち、資本コストを超過する分のことです。
EVA®(経済的付加価値)=営業利益×(1ー実効税率)ー投下資本×加重平均資本コスト
加重平均資本コスト ={負債/(負債+株主資本)}×負債コスト×(1-実効税率)+{株主資本/(負債+株主資本)}×株主資本コスト
株主資本コスト=配当利回り+配当成長率
配当利回り=1株あたり配当額/株価
資本コストとは、債権者や投資家が貸付や出資の見返りとして求めているものです。負債については金利、株主資本については投資家が期待する収益率のことです。これらを加重平均して投下資本(負債+株主資本)に乗じたものが資本コストです。なお、実際のEVA®の計算においては、営業利益にしても投下資本にしても、損益計算書上に書かれている単純なそれらではなく、いくつかの修正を施します。これについては割愛しますが、たとえばG・ベネット・スチュワート著、日興リサーチセンター訳『EVA®創造の経営』(東洋経済新報社)などに詳しい計算方法が示されています。興味がある方はそちらをご覧ください。