収穫期とは、成長期や持続期に投資してきた成果を刈り取る時期、つまり事業の手じまいを視野に入れた時期です。
収穫期にある事業は会計上の利益ではなく、キャッシュフロー(現金の収支)を重視します。会計上の利益は減価償却費や引当金繰入額など、現金の動きを伴わない収支も考慮したものですから、もはや刈り取りに入った事業においては重視しません。
キャッシュフローを稼ぐうえで重要なことは顧客の利益性です。儲かる顧客だけを相手にします。長期的な利益を視野に入れないので、獲得することにコストがかかる、新規顧客は追求しません。既存の顧客でも、収益的でない顧客まで維持しようとはしません。
キャプランとノートンは下の表のような顧客戦略を推奨しています。
Aの範囲にある顧客にはそのまま定着を促します。
Bの顧客にももちろん定着を促しますが、加えて、今後価格引き下げ要求や納入方法の変更要求などによって、利益性が低下するようなことがないかどうか注視します。兆候が表れたら早めに対処します。
Cの顧客には、価格や納入方法の改善交渉をすることによって、利益性ある顧客に転換するよう促します。
Dの範囲にある顧客には定着も、利益性ある顧客への転換もあえて促しません。
これを営業パーソンの歩合に置き換えると、次のようなことが考えられます。顧客別にその利益性を評価してABCDに分類します。そして、それぞれに異なった歩合の率を設定します。当然、Aが最高でDが最低です。あるいは、Cの顧客がAになった場合、歩合を払うようにします。
ターゲットとする市場セグメントと顧客の利益性
利益性のある顧客 | 利益性のない顧客 | |
ターゲットとする 市場セグメント |
A:顧客 を定着させる | C:顧客を転換させる |
ターゲットとしない 市場セグメント |
B:顧客をモニターする | D:顧客を無視する |
(出所)ロバートS・キャプラン、デビッドP・ノートン『バランス・スコアカード~新しい経営指標による企業変革』(1997、生産性出版)。ただしABCDという記号は引用者が独自につけました。