績給は売上拡大の強力な武器になりますが、形だけ取り入れても効果はありません。なぜそのようにするのかを理解していなければなりません。業績給は使い方を間違えると売上をむしろ抑制したり、営業パーソンを誤った行動に導いてしまったりもします。導入する前に、経営者の方にこれだけは押さえておいて欲しいという基本をまとめました。
最も基本的なこととして、一度決めた歩合の率は、上げることはできても、下げることはできないということです。会社は歩合の率を実際に下げないだけでなく、将来も下げることはないと宣言する必要があります。
なぜか。それは、「稼ぎすぎたら歩合を下げられる」と従業員が学んでしまったら、力を出し惜しみするようになるからです。歩合の率は逆戻りできない歯車のようなもので、前に進めることはできますが、後ろに戻すことはできません。
あるIT系の企業では、基本給を温存したうえで、担当するコンテンツの売上に比例して業績給を払う制度を導入しました。目論見通り売上は増えました。社員の年収も増えました。しかし会社は、業績給の額が大きすぎるという理由で、歩合を下げてしまいました。さらに悪いことに、社長が、特に大幅に売上が増えた社員の前で「今までは本気を出していなかったの?」と言ってしまいました。これでは業績給を、社員の底力を知るための実験に使ったと思われても仕方がありません。試されていると知ったら、全力を発揮する人はいません。以後、売上は元に戻ってしまいました。
食品販売のある会社では、期間限定の業績給制度を導入しました。期間中の売上は増えましたが、予定通り終了後に制度をやめました。すると売上は以前より減ってしまいました。予定通りであれ何であれ、なくすることは下げることに違いなく、やはり負の影響が出ました。