23-1.日本は高齢者労働大国

駅やスーパーの構内を巡回している、高齢の警備員を私たちは見慣れています。しかし外国人にとってあれは非常な驚きだそうです。母国では働いている高齢者の姿を見ることさえまれなのに、先進国の一つである日本で、高齢者がかくも厳しく、それでいて低賃金の仕事をするのかと。

 

表にOECDの統計による平均引退年齢を示しました。日本の高さが際立っています。後述するように定年制は日本にだけあり、大部分は60歳ですが、日本人男性は定年後10年、高年齢者雇用安定法が定める65歳以後も5年働いていることになります。まさに高齢者労働大国です。

 

日本人が高齢まで働かなければならない理由は、年金の支給水準が低いことにあります。OECD統計によると、年金の総所得代替率(年金受給額÷所得)は、加盟国平均が61%であるのに対し、日本は36%で加盟34か国中33位です。これには現役時代の所得が高いという理由もありますが、人口大国としては最も所得が高いアメリカでも42%です。フランスは49%、ドイツ42%です(2011年、中位数所得者)。4月から消費税が引き上げられましたが、日本の財政収支を均衡させる消費税率は33%の、しかも恒久増税だという説があります(小林慶一郎『米経済学者が試算、赤字国債「150年返済計画」』、文藝春秋2013年9月号)。年金は減ることこそあれ増えることはないでしょう。もはや高齢者は補助的な労働力あるいは半引退者とみなすべきではなく、仕事の内容も労働時間も、当然賃金も、まさに現役として扱うべき時が来ています。

 

主要国の平均引退年齢(2011年)

 

男性

女性

フランス

イタリア

ドイツ

OECD平均

イギリス

アメリカ

日本

59.1

61.1

61.8

63.9

64.3

65.5

69.7

59.7

58.7

60.5

62.4

62.1

64.8

67.3

(資料:OECD “Pensions at a glance”)

 

 

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