23-2.定年は日本独特の制度

1887年、海軍火薬製造所が初めて定年制を採用しました。その後1980年代に大企業を中心に普及し、1910年代に多くの産業に普及しました。

 

厚生労働省の『就労条件総合調査』によると、2013年時点で93%の企業が定年を定めており、その98%は一律定年制で、残りは職種別定年制などです。一律定年制の場合、「60歳」とする企業が83%を占めています。「65歳以上」という企業も14%あります。小規模企業ほど定年年齢が高い傾向があり、「65歳以上」という企業は、従業員数1,000人以上の大企業では5%にとどまるのに対し、30~99人の小企業では17%あります。

 

先進諸国の中で、定年制は日本にだけあります。アメリカでは「雇用における年齢差別法」で年齢を理由とする採用拒否や解雇、労働条件差別を禁止しています(パイロットやバス運転手などは例外)。ヨーロッパではEU指令が、加盟国に雇用や職業における年齢差別を禁止することを求めています。

 

日本では定年はもとより採用における年齢制限も常識です。役職定年や、一定の年齢に達したときに賃金を減額することも相当程度普及しています。雇用対策法は求人や募集に際して年齢差別を行うことを原則禁止していますが、「長期勤続によるキャリア形成のため」、あるいは「技能・ノウハウ等の継承のため」などの理由があれば年齢制限を行うことを認めています。ちなみに日本の企業は履歴書に写真を貼ることを強く求めますが、あれも外国人には、人種でふるいにかけているのかという疑念を抱かせます。

 

欧米では、年齢で人を差別することは性別や人種、宗教で差別することと同列にみなされるといいます。日本ではそのようなことはありません。採用や退職における年齢差別と引き替えに、いったん組織の中に入ってしまえば年功序列という形の逆差別も存在します。そういう状況でいきなり年齢差別禁止を法制化しても、実際は年齢で落としているにもかかわらず、名目上は他のことを理由にする不採用が横行するだけで、何の効果もないでしょう。アメリカでは年齢差別は禁止されていますが、能力不足を理由とする解雇は日本より広範に認められています。日本で定年を廃止したら、雇用量を調整する手段は普通解雇しかなくなってしまいます。これは労働者も経営者も支持しないでしょう。

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