23-5.定年廃止は時期尚早

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高安法)というものがあります。この法律は企業に対して

①65歳への定年延長

②60歳定年到達後65歳までの継続雇用

③定年制の廃止

のいずれかの雇用確保措置を講じることを義務付けています。これらの中でもっとも合理的な選択肢は何でしょうか。

 

まず定年廃止は時期尚早です。年功型賃金制度のままで定年を廃止した場合、いままで定年で収支を均衡させてきたものが、何歳で均衡させれば良いのか分からなくなってしまいます。引退年齢で均衡させることができれば理想的ですが、それは何歳になるかわかりません。若齢に置き過ぎると企業側の負担が増えますし、高齢に置き過ぎると従業員から不満が出ます。

 

また、定年がなくなると、整理解雇や懲戒解雇という例外を除いて、解雇の手段は普通解雇(能力不足を理由とする解雇)しかなくなってしまいます。しかし何が能力不足であるかについて、法的に確立された基準はまだありません。一企業が独自に設定しても、法的に無効と解される恐れがあります。法律以前の問題として、普通解雇には経営者側の心理的負担も大きいでしょう。

 

実際、厚生労働省の「高年齢者の雇用状況」(2013年)によると、雇用確保措置として定年廃止を採用している企業は全体の3%しかありません。

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